午前6:00時起床。外が真っ暗なのでおかしいと思い窓を開けると雨がシトシト降る音がした。昨日山の中で雲を見て雨が降り
そうだと思ったが予想が当たった。もし山の中で夜を明かしていたら、道はぬかるむし川は増水して渡れないし、身動きが取れなく
なって完全にアウトだった。ここからブーマルンダデスまでは車が通れる事を祈る。まだ暗いうちにホテルを出発。ホテルの玄関
を開けてビックリ、なんと雨ではなく雪が降っていた。シトシトという音は屋根の雪が融けて流れ落ちる音だった。雪は少し積もり
ホテルの周りは真っ白になっていた。この先の道が通れるかどうか心配だ。ホテルをでて暫くすると写真でよく見た七曲があった。
まだ暗かったが一応写真を撮った。手前に見晴らしの良さそうな場所があったのでそこへ行って写真を撮っていると次第に空が
明るくなり景色を写真に収める事が出来た。
ホテルからブーマルン・ダデスまでの道は舗装もしっかりしており、町に近づくにつれて雪は雨になり問題なく町に着いた。
町に出て最初のガソリンスタンドで給油。一路ワルザザートの町を目指す。ブーマルン・ダデスからワルザザートの間の景色は
アメリカのアリゾナの赤茶けた砂漠地帯の景色に似ている。道は主要都市を結ぶ立派な道だが橋は増水時に水没するように作られて
いた。しかし、何箇所か立派な橋に架け替える工事をしていた。川原にはパームツリーが生え集落には土色のカスバが建つ。
途中"TOKYO"とういう文字の書かれた看板を見かけ思わず写真にとってしまった。モロッコに来て初めて見る日本食屋だ。しかし、
寄っている時間がなく残念。右手にアトラス山脈を見ながらひたすら西へ走る。遠く山脈の上の空は一面濃いグレーの雲で覆われて
おり、高い山は山頂付近が雲の中に隠れていた。
ワルザザートは思ったより都会だった。ガイドブックなどを読む限りエルフードと同じようなガラの悪そうな田舎町かと思って
いたが、普通に歩くことの出来そうな都会のにおいを感じる町だった。マラケシュ方面へ向かう町の出口あたりのガソリンスタンド
で給油。飲み物を買おうと思ったが乞食がまとわり着いてきたので諦めて出発。前を白いバスが走っていたので暫く後ろについて
いった。直ぐに右へ行くと有名な観光地Ait-Benhaddouという看板が出てきた。砂漠で会った人たちがみな良かったと言っていたので
本当は行きたかったが時間がなく後ろ髪を引かれながらここも通過。走りながらこれから起きる事を予測していたので、皆が素晴しい
と言う有名な場所を捨てる事が出来たのだろう。
道が山を登りだして暫くすると景色が白くなり始めた。路面にも雪が積もりだしてきた。私はワルザザートからずっと後を追って
きたバスの直ぐ後ろについてバスが作った轍を走った。無理に付いて行こうとして追突しないよう「自分のペースで行け・・・、
自分のペースで行け・・・」と運転しながら呟き続けた。タイヤがスリップしているのが分かった。気がつくと路面は完全な雪道に
なっていた。峠を越えると雪が少し少なくなった。しかし、その先にもう一つ峠がありさっきよりもっと雪がひどく辛うじて走れる
という感じだった。私の車はチェーンを積んでおらずタイヤはスノーでもスタットレスでもなく普通のタイヤ。チェーンをつける必要
が無ければ普通のタイヤでも走れる自信はあった。対向車はみなチェーン無しだし道端でチェーンを付けている車もいなかったので
なんとかなるだろうと思った。しかし、ガードレールが無くスリップしたら谷底という道での運転は緊張の連続でとても疲れる。
しかしこの山を越えないと日本に帰れない。ワルザザートに戻って車を返してバスに乗ろうかと本気で考えた。バスの轍にも雪が
積もりアスファルトが見えなくなり、よく見るとバスもスリップしながら走っている。昨日の山の中のダートロードに続き身の
危険を感じながらのサバイバルとなった。
二つ目の峠を越えて暫くすると雪がやみ路面もアスファルトが見えてきた。空は分厚い雲に覆われ雨が降っていたが、雪に
比べれば全然問題ない。少し山を降りると雪は完全に無くなった。峠を越えて最初の町に前を走っていたバスと同じ塗装のバスが
何台も止まっていた。前を走っていたバスもそこで止まった。そこから先はプジョー205とレースモードで走り、気がついたら平地
に降りていた。マラケシュの町の手前に大きなガソリンスタンドがあったので、そこで給油し返却できるように車の中を整理。
町の中は車でごった返していた。マナーの悪い車がいて走りにくい所もあるが、山の中の道に比べれば安心して走れる。よく分から
ない比較だが、とにかく混雑した都会の道の運転は全く苦にならなかった。
マラケシュのホテルは予約していなかった。翌日列車でカサブランカへ向かうので駅まで歩ける範囲でホテルを探した。
駅の脇に路上駐車して歩いてガイドブックに載っているホテルを回った。ちょっと通りから外れた奥まったところに綺麗なホテル
があったのでフロントて部屋が空いているか聞くと、部屋は有ったが料金がちょっと高かったのでやめた。3〜4軒回って疲れて
きて駅の近くで探すのを諦めかけたとき、ガイドブックに載っていないホテルを見つけた。外から見た感じではちょっと高級そうで
きっと600DHか700DHはするだろうと思ったが駄目もとで入ってみた。部屋は空いており料金は以外にも安く朝食付きで480DH。
車を取りに戻ってチェックイン。ロビーはシティーホテル並みに高級感があり、部屋も都会のホテルという感じだった。
車でホテルに行きチェックインして荷物を降ろしてからレンタカー事務所へ行き車を返却。住所の場所に着いてもなかなか
事務所が見つからない。同じ通りを何度も往復したが他のレンタカー会社の事務所はあるのにEuropcarの事務所だけが見つからない。
アドレスの番号の場所にはガソリンスタンドがある。仕方なくガソリンスタンドの前で車を止めてスタンドの方を見たら、なんと
スタンドの事務所にEuropcarの看板が掛かっていた。常識は目を見えなくするものだと思った。事務所の前に車を止めて中に入ると
50歳前後の女性が手続きをしてくれた。一緒に車をチェックしに行くと泥だらけになった車をみて顔をしかめて首を横に振りながら
「フーッ」と大きなため息をついた。彼女はトランクの中のスペアタイヤの空気圧まで指で押して調べた。車を一周して一通り調べ
事務所に戻って手続き完了。私はレンタカー事務所を後にして暫く歩きタクシーを拾ってマラケシュのメディナへ向かった。
メディナの入り口に着きタクシーのドライバーは言葉が通じず料金が分からなかったが、10DH渡すとうなづいたので降りた。
ジャマ・エル・フナ広場では屋台が開店のしている最中だった。コブラ使いがいたので写真を撮ると近くにいた男が金を払えと
詰め寄ってきた。私は知らん振りをしてその場を去ると追って来ることは無かった。やはりモロッコの人は一瞬押しが強いが深追い
せず割とあっさりしてる気がする。コブラ使いの他にも猿使いや民族音楽のバンドやアクロバットなどで広場はごった返していた。
広場を囲む幾つかの建物の屋上にテラスがあるのが見えたので、私はあるレストランの屋上に上がりサンドイッチを食べコーヒーを
飲みながら暗くなるまで広場を眺めながらそこで過ごした。日が暮れると沢山の屋台の裸電球が一斉に点灯し雰囲気がより一層盛り
上がった。
レストランを出てスーク見物に出かけた。私は方向感覚に自信があったが、スークの中に入るといつの間にかすっかり現在位置
が分からなくなり方向も見失っていた。適当に歩くと小さな広場に出た。土産物屋で小さなタジン鍋の置物を買ってフナ広場への
道を聞くと、90度方向を間違えていた事が分かった。ずっとスークの中を歩いているつもりだったが、あとで地図で確認したら
スークの反対側へ出てもう少しでメディナの城壁の外へ出てしまう所だった。道理で車やバイクが走っていたわけだ。スークを出て
フナ広場に戻りオレンジジュース屋さんの屋台の写真を撮っていたら、おじさんの笑顔があまりに明るいのでつられて一杯飲んで
しまった。後で写真を見て気がついたのだが、実はそのおじさんは私が写真を撮っているあいだずっとジュースを注ぐポーズを
とってくれていた。バスでホテルに戻ろうと思いバス乗り場に暫く立っていたが、なかなか来ないし料金も払い方も分からないので
結局またタクシーを拾った。帰りの料金はなぜか20DH。ホテルに戻ってからまだ寝るまでに時間があったので、マラケシュの駅へ
行きイタリアンレストランで久しぶりにスパゲティーを食べた。味は本格的で美味しかった。ずっとモロッコ料理ばかり食べていた
ので久しぶりに違う食事が出来て良かった。日本人なのになぜかイタリアンを食べて落ち着いた。
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