2008年11月15日、時差ボケのせいか疲れているの夜中に何度も目が覚めた。結局7時に起床。レンタカーの事務所の営業時間を
調べたら朝8時30分からだったので始業時間に着く様にホテルを出発。Fezの新市街のビルの造りは台北に似ていて、道路に面した
1階が歩道になっていて、飲食店はそこに椅子やテーブルを出してオープンエアのカフェのように使っている。アドレスから推測して
目星をつけたあたりに向かって歩き、ハッサン2世通りの交差点を左に曲がるといきなり目の前にEuropcarの看板が目に入ってきた。
もう9時を過ぎているのに事務所のドアは閉まっていて中には誰もいなかった。今日は日曜日。もしこのままオープンしなかったら
ここで計画中断か?通りの真ん中にある公園のベンチに座ってこれからどうしようかと考えた。レンタカーを諦めてバスで砂漠へ
向かうか?あるいは砂漠を諦めてFezやCasablancaなどの町をみて回るか?しばらくあれこれ思案しているとレンタカー事務所の前
にシルバーの小さなKIAが止まり、乗っていた男が事務所のドアを開錠して中に入っていった。するとそれまで事務所の前にいて私
の方を見ていたおじさんが私を見て手招きをした。
荷物を持って事務所へ行くとKIAから降りてきた男が書類をカウンターに置いて私の名前を呼び手続きを始めた。表に止めてある
KIAで良いかという。本当はルノーのローガンを予約したのだがそれ程大きさも変わらないしどうせ一人なので承諾した。すると今度
は料金について話をしだした。そしていきなり14,300MADのデポジットを要求してきた。そして予約は2,700MADだが3,111MAD払うなら
デポジットの金額を4,300にしてやると言う。そんな条件はウェブサイトには書いていなかったと言っても、デポジットを払わないと
貸さないという。しかし、14,300MADは日本円にして20万円近くになるので万が一戻ってこなかったら面倒だし、クレジットカードの
利用可能額を20万円も減らしてもし何かあった時に使えなかったら嫌なので結局レンタル料3,111MADとデポジット4,300MADで手を打
った。まさに旅人の足元を見た商売である。地図は無いかと聞くと向かいのKIOSKで買えという。飲み物を買うつもりだったので
KIOSKに行って見ると色んな種類の地図やガイドブックが置いてあった。比べた結果ミシュランの地図と英語で書かれたガイドブック
とミシュランのガイドブックを買う事にした。しかし代金を聞いてびっくり、ミシュランのガイドブックが3,000円以上もしたので
棚に戻した。
KIOSKで、水、コーラ、ポテトチップ、地図、ガイドブックを仕入れて車に戻り気分を変えてさあ出発。フェス出発予定の12時
まで少し時間があったのでFezのメディナを観光する事にした。メディナとは昔の城壁に囲まれた旧市街の事。城壁の近くの駐車場
に車を止めると係りがガイドを雇えと強要して来た。ちょっと散歩するだけだから要らないというと、メディナの中は道が何百本も
あって迷うぞと言う。ここに駐車したらガイドをつけないといけないのかというとそうだと言うので他所に止める事にした。少し
離れた場所に小さなパーキングがあったのでそちら止めてメディナまで歩いた。目的はなめし皮を染色する桶が沢山ならぶタンネリ。
土産物屋が並ぶスーク(市場)を通り越してタンネリだけ見たら出発するつもりで、30分もあれば十分だろうと思っていた。
Fezのスークは客引きの嵐だった。スークの中を歩いている間ひっきりなしに声を掛けられ無視するのも疲れた。みな道案内
をするといって声をかけてくる。Fezのスークは斜面にあるので道が坂になっていて方向感覚がつかみやすかった。門からずっと
下りだったので、逆に登れば来た方向へ帰れる。ガイドブックを開こうものなら近くにいる子供たちがタンネリ?タンネリ?と
良いながら寄ってくるので地図が見れない。ずっと下っていったらついにメディナから外に出てしまった。戻って今度は違う道を
通ってみたが結局また外まで出てきてしまった。仕方なく人の少ないところでガイドブックの地図を開いて場所を確認。タンネリが
あるはずの方向へ向かって歩いていると今度は違う門から外へ出てしまった。メディナに入ってから既に1時間が経過していた。
このままではここで1日潰れてしまいそうだった。近くに大きなモスクが見えていたので地図を見て自分の場所を把握。タンネリ
の場所も確認。再びスークの迷路へ入って行った。暫くするとフランス人らしき白人のツアーグループがいた。歩いている方向から
してタンネリに行くだろうと思い付いていった。もうそろそろだと思っていたら突然前を歩いていた人が道端の小さな入り口に消えた。
そのまま真っ直ぐ歩いていたらいつの間にかツアーグループがいなくなっていた。前を歩いていた人が入っていった入り口に戻ると
入り口の前で客引きが声をかけてきた。さすがに小さな入り口に一人で入る勇気は無かったので客引きの一人に幾らだ?と聞くと
1MADで案内するという。聞き間違えかと思ったが彼についていく事にした。
入り口は直ぐに階段になっていて、中に入ると革製品屋さんだった。壁中にバッグやら何やら革製品がずらっと並んでいる
店内は迷路のようになっていて、ずっと奥へ行くと窓があり遠くの景色が見えていた。窓辺に行って下を見るとそこにタンネリが
広がっていた。タンネリはものすごい異臭がすると聞いていたが風向きのせいか特に嫌な匂いはしなかった。革ジャンや革つなぎの
匂いが濃くなったような匂いが立ち込めていた。窓辺に行くと客引きの男がお金を出せと言う。まさか1MADではないだろうと思った
が1MADの札は無かったのでとりあえず5MADのコインを手のひらに出してみた。すると男はこれで良いだろ?みたいな事を言って
さっとコインを取って消えていった。今度は中にいた男が英語は分かるか?というので少しだけというとタンネリの説明をしだした。
説明はいらないというとお金は要らないと言ったが、無視し続けたら諦めて黙った。写真を取り終えて外へ出ようとすると男が
金を出せと言う。さっき払ったと言ったらあれは彼のだ。俺には無いのか?というので無いときっぱり言ったら諦めた。モロッコ
の客引きは押しが強いけれどあまりしつこくはないように感じた。
車に戻り漸くFezを出発。メディナを出て新市街を出るまでは地球の歩き方の地図を参照。地図の外に出ると後は道路標示を頼り
に進んでいった。最初のチェックポイントはIflane。Fezの市街を出ると道は片側1車線の対面通行で制限速度は時速100キロ。地元
の車のマナーも聞いていたほど悪くなかった。名古屋近辺の交通マナーの方がよっぽど悪い。モロッコはネズミ捕りが多いと聞いて
いたがこれはその通りだった。Fezの町から離れ小さな町の入り口付近で制限速度が80キロに変わった直後に警察がスピードガンを
もって数台の車を止めていた。私は様子見でおとなしく運転していたので難を逃れた。結局この日フェスを出てからミデルトに着く
まで3回ネズミ捕りに遭遇した。幸い私はいずれも引っかからずに済んだ。イフラン、アズロウと一つ目の山脈を越えるとき、道端
に野良犬を見かけた。車から何か食べ物を投げてもらうのを待っているかのようだった。アズロウを過ぎるとなんだか懐かしい景色
になった。赤茶けた火星のような岩漠や砂漠がカリフォルニアやアリゾナやネバダやユタあたりにそっくりだった。
午後4時ミデルトに到着。まだ明るかったのでもっと先へ進みたいと欲が沸いてきた。しかし、昨日は午後5時30分には暗く
なっていたので、このまま先へ行くとアトラス山脈を越える時に暗くて景色が見れなくて勿体無いし、知らない土地に真っ暗に
なってから到着だとホテルも選べないと思い、事前にインターネットで調べておいたミデルト郊外の国道沿いのホテルに泊まる
事にした。予約はしていなかったがフロントへ行くと部屋は空いていて夕食朝食付きで450MADとの事。町のレストランは汚そうで
行く気がしなかったのでここで手を打った。チェックインして部屋に荷物を置いてから再び町へ行った。スークには色んな服を
来た人たちがいた。とんがり帽子とマントがくっついたような服、麻布の袋に開けた穴から首を出したようなポンチョを着て円柱形
の帽子を被った人など、まるでスターウォーズに出てくる惑星タトウィーンのようだ。道端に放置されたさび付いたポンコツの車や
修理工場ではとんがり帽子のマントを着た人が車を修理していたり、荷台に溢れおちそうなほどジャンクを積んだオンボロトラック
が走っていたり、スークの外はさらに惑星タトウィーンの雰囲気が出ていた。その辺をルークやベン・ケノービがあの衣装のまま
歩いていても全く違和感が無い。
車にガソリンを入れようと思いホテルから一番近いスタンドに行くとポンプに、Super、Super Sans Plomb、と書いてあり、
どれを入れていいか分からなかった。モロッコでは有鉛のガソリンが売られている事はガイドブックで知っていた。レンタカー屋
でも借りた車にはかならず無鉛ガソリンを入れるようにと念を押された。しかし、スタンドの人と言葉が通じずどちらが無鉛か
分からない。おそらくSans Plombが無鉛なんだろうと思ったが、マークに葉っぱの模様がついていたので、もしエタノールが沢山
混合されていてエンジンが壊れたらいやだと思い確認する事にした。車をスタンドの空き地に止めてダッシュボードからマニュアル
を出してみたがガソリンの種類までは書いてなかった。そのスタンドを出て町の真ん中にあるシェルに行くと英語が少し通じた。
そこで聞くとSans Plombで良いというので信じる事にして給油した。ミデルトのシェルはクレジットカードも使えた。
ホテルに戻り暫くして夕食。メニューを見るがさっぱり分からない。名物のタジンという名前を見つけ指差して注文。出てきた
のは想像とちょっと違い、肉の塊とナツメを煮込んだものだった。食べてみると肉はとても柔らかくナツメも肉とマッチしていて
とても美味しかった。暖炉のあるホールではモロッコの民族音楽の生演奏をしていてとても雰囲気が良かった。
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