戦争の記憶
2020.08.15
 シアトルの北、ボーイング・エバレット工場に隣接するペインフィールドと言う空港に、マイクロソフト共同創始者ポールアレン所有のFlying Heritageという私設博物館がある。彼は数年前レイテ島沖海底の戦艦武蔵を撮影するなど、第二次大戦時代の武器にとても興味があるらしく、各国の戦闘機だけでなく、戦車や大砲、V2ミサイルまで私費で買って展示している。日本の戦闘機も零戦と隼の両方あり、驚くべきは展示されている飛行機の殆どが今でも飛べる状態で保存されており、この日もアメリカの大戦機がハンガーの外でエンジンを回していた。

 膨大なコレクションを見終わり売店に繋がる出口に向かうと、そこに日の丸を貼ったフライトスーツの後姿があった。人形に着せてるのでなくただ服が飾ってあるだけなのだが、まるで人が立っている様に見えた。服は傷みも汚れも無いので、子安通一丁目青年団の井口民雄君は無事だったかも知れない。しかし、遠い異国でずっとここに立たされているのかと思ったら涙が出てきて、私は彼の正面に回って手を合わせた。







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